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熱設計トレーニング
はじめに
電子機器の発熱は急激に高密度化が進み、熱対策は大きな設計の課題となっています。 限られた時間の中で解決策を見出すのは容易な作業ではありません。設計や試作試験段階では、いろいろな熱対策の工夫を施しても思い通りに冷却できない場合もよくあります。
例えば放熱フィンを使ったり、気流を直接当てることによって冷却ができることをある程度は分かっていても、その根拠となると難しい理論に結び付けて理解・計算することは大変です。無駄な対策を含む幾つかの対策の組み合わせにより結果オーライで済ませてしまうこともあるかもしれません。
こんなときに、放熱フィンの特性や気流と熱伝達の関係や、また自然空冷を採用するのか強制空冷を採用するのかなど、冷却・伝熱の基本的な関係をきちんと知っているだけで、実務での熱対策は随分と効率化できるはずです。熱設計に関わる理論や詳細な解説を行う書籍はたくさんあります。しかし、設計の現場に携わる方が熱対策のガイドとして傍らに置いておけるような、または見過ごしがちな自身の経験を確かなものとして理解させてくれるような書籍はなかなか見当たりません。
この熱設計トレーニングでは、難しい理論はとりあえず後回しにして、冷却・伝熱の原理原則となる現象をシミュレーションを通して可視化して見ることで、熱設計を行う際に役立つキーポイントとなるノウハウを自分の中に容易に蓄積・構築することを目的としています。
トレーニングの連載を通して、熱の流れ方や流体の流れと冷却効果の基本的な関係を自分の体験と重ね合わせながら理解していただき、実務の熱設計・熱対策に活かしていただければと思います。
本トレーニングは、大きく基礎編と応用編に分けて進めます。
まず、基礎編では伝熱の3要素といわれる熱伝導、対流熱伝達、放射熱伝達の伝熱形態別に基本的な伝熱現象を理解できるようにします。さらに、対流伝熱を支配する流体の流れの特徴について見ていきます。最後に、冷却問題を考える際に必要な基本的な冷却の常識や知っていると便利な情報を示します。
また、応用編では電子機器によく使用される各種電子部品中の伝熱現象やその冷却性能計算モデルについて見ていきます。最後に熱伝導率測定法に使用されている伝熱現象やFlowDesignerの特徴である逆解析を使用した冷却設計例などを紹介します。
トレーニング前の基礎知識
伝熱の3要素について
温度差のあるところには常に熱の移動があり、熱は温度の高いところから低いところへ流れます。
熱移動には主に熱伝導、対流熱伝達、放射熱伝達の3つの形態があります(解説図-1)。伝熱計算を行う場合、機器中の熱流がどの伝熱形態で生じているのかを正しく判断する必要があります。
熱伝導とは固体中や流れていない流体中を熱が移動する現象を言います。
金属であれば自由電子の移動により、また電気絶縁体であれば原子の格子振動により熱エネルギーが移動していきます。
材料の熱伝導率が大きいほど伝導伝熱量は大きくなります。
対流熱伝達とは流体の流れに伴って固体壁から流体へ熱が伝達される現象を言います。
ファンなどにより強制的に駆動された流体へ熱が伝えられる現象を強制対流熱伝達、流体の温度上昇による密度変化のために生じる浮力により駆動された流体へ熱が伝えられる現象を自然対流熱伝達と区別しています。
流速が大きいほど対流熱伝達量は大きくなります。
放射熱伝達は電磁波(主に赤外線)により熱が直接伝達される現象を言います。
温度差が大きいほど放射熱伝達量は大きくなります。
目次
1. 素子 | 掲載準備中 |
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2. プリント基板 | |
3. モジュール | |
4. 筐体 | |
5. ヒートシンク | |
6. ヒートパイプ | |
7. 熱交換器 | |
8. 熱伝導率測定 | |
9. 逆解析 |
執筆者の紹介
熱設計のスペシャリストが様々な問題を出題
アドバンスドナレッジ研究所 伝熱・冷却研究室 の大串、村上が本トレーニングを担当いたします。
研究室長村上 政明
- 元三菱電機 先端技術総合研究所生産技術センター
技術顧問大串 哲朗
- 広島国際大学 客員教授(工学博士)
- 元三菱電機 先端技術総合研究所